この地域に移住してから10年。友達が遊びに来てくれた日や、せっかく天気がいいのにすることがない日など、1年に2回、合計20回以上は登っている。毎回違う表情を見せてくれる青葉山には飽きることがない。
今回は日本一周自転車の旅をしている友達が東京から北海道を経由し、初めて高浜町に遊びに来てくれた。半年ぶりの再会は敦賀方面から自転車で走ってきた。
彼の高浜町の第一印象は「あの山いいですね、海に浮かぶ富士山みたいで」
青葉山を気に入ってくれた。さっそく次の日に登りたいと。自転車旅の疲れもあるだろうに、青葉山が惹きつけるのだろうか。僕は仕事で付き合えないと言ったのだが、結局彼は一人で登りに行った。翌朝青葉山の麓で作られているお米で作ったオニギリを渡し、僕は仕事に向かった。その日の夕方、充実した1日を過ごした表情の彼と再会した。夕食の準備をしてビーチへ。高浜町に来てからは、よくビーチで食事をとる。少なくとも、3倍は美味しくなる。そこで彼は山頂で撮った写真を見せてくれた。山頂の岩の上で最高の天気で最高の景色を独占し、最高に美味しそうな(僕の握った)オニギリを食べていた。うらやましい。僕も青葉山に登りたくなった。日本一周の自転車旅の途中の登山、それだけでもハードなのに、僕は彼に頼んだ、「もう一度一緒に登ってくれないか?」なんと、彼は快諾してくれた。そして日本一周自転車の旅の途中2回目の登山決定!1回目の登山は東側から登ったそうなので、2回目は西側から登ることにした。
登山当日、天気はあいにくの曇り。夜に雨も降っていたので、登山道の状態はあまり良くないだろう。しかしテンションは下げずに、青葉産のオニギリを二人分用意して、高浜の友人に西側の登山口近くまで車で送ってもらった。登山口から1kmほどのところから2回目の登山開始。途中高浜町と舞鶴をつなぐ小浜線の水色の2両電車を見送り、松尾寺に到着。
ここが西側の登山口になる。青葉山はいくつもの登山口があり、それぞれの表情を見せてくれる。そして東西二つの峰があり、今回はまず西側の峰を目指す。山に入ると、昨晩の雨のおかげで、木々が生き生きとして緑が濃く力強い。水滴の残る植物たちはカメラ映りも良く、普段気が付かない小さな植物にも目がいく。また新たな発見にワクワクする。
足場は悪いが、雨翌日の登山、悪くないかも。登っていくと、濃い霧が出てきた。凛とした雰囲気に、思わずシャッターをきる二人。
この息をのむ静けさを、色を無くして撮ってみたらどうだろうと、モノクロでそして撮影。自然の力強さを感じるカッコいいのが撮れた。
1回目とは違う表情の青葉山を彼も楽しんでくれている。そして、この霧はこれから晴れるサインだと、頂上への期待を膨らませる。西側からの登山はロープや鎖などがあるコースもあり、アスレチックな場面も楽しめる。
そして西峰に到着、少し霧が残っていたが、雲のように流れる景色は、晴れの時とは違う静かな美しさがあった。
ここからは海も山も一望できる。山頂にも雨の恵みを受けた元気な植物がたくさんいた。青葉山の植物は薬草として使えるものが多くあるらしい。まだまだ学ぶことが たくさんありそうだ。青葉山は薬草の宝庫でもある。こんな自然のエネルギー満載の山頂で念願のオニギリを食べた。うまい!こんな景色の中、その山の恵みを体にもいただける、こんな豊かな登山が、こんな気軽に出来るから何度も来てしまう。何より、このオニギリのせいだろう。
そして、東峰に向かう。西峰から東峰の登山道も刺激的なコースになっている。そして東側へ下山。天気も回復し、木々の間から光が差してきた。もう体の中にはマイナスイオンしかない。新しい命も芽生えている。
高浜町を一望できる展望台に到着。少しガスがかかっていたが、相変わらず良い町だ。海も山も豊かで、その中で小さな人の営みがある。この景色の美しさは、5感で感じるだけでは足りない。この美しさが心に届いた時、生涯消えることがないと確信できる感情が、生き方にも影響する経験となる。それは、この町に初めて訪れて10年で積み重ねた、出会いや優しさの想い出がこの景色を彩る。生活には、今回の景色みたいに完璧じゃない時もたくさんある。でも、友人がこの町に訪れてくれて、この町を受け入れてくれた友人と、この町で過ごし、この町の思い出を話す。ここで生きている幸せを強く実感できる場所だ。最高の景色を目に焼き付け、東側の出口に到着。こんなに写真を撮りながらの登山は初めてだったので、とても新鮮で楽しかった。
高浜側の登山口の近くには青葉山ハーバルビレッジという青葉山のビジターセンターとカフェがある。オープンテラスのカフェで少し休憩。野菜スープが身体に染みる。青葉産のゴボウを使ったポケットパンで青葉山の恵みを体にも。カフェ前の芝生広場では、子どもたちがプールで元気に遊んでいる。疲れも吹っ飛び、思わずまた1枚。少し離れたハンモックで遊んでいた2人の子どもたちは今日初めて出会ったらしい。この山は自然と人だけじゃなく、人と人もつないでくれると思った。ビジターセンターにも寄って、登山中に見た植物を復習。あの植物はこんな薬効があるのかと感心の連続。たくさんの感動を与えてくれる、青葉山への愛着がどんどん増していく。
日本自転車旅の途中の友人は1週間で2回も登った青葉山に愛着を持ってくれて、海からも素敵な写真を撮ってくれた。また春に遊びに来てくれるそうだ。一緒にまた違う表情の青葉山を一緒に撮って楽しみたい。
Writing by Toyochika Kamekawa
Photo by kaito Inagaki &Toyochika Kamekawa
Edit by Takehiro Shikata
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