WAAcation WEEK オンラインセッション4日目。
今注目されるワーケーションは、ワーク(仕事)×バケーション(休暇)の造語で、会社や都会を離れ地域で仕事を行うスタイルのこと。全国500以上の地域で取り組まれています。高浜町では、このワーケーションを、「WAA(Work from Anywhere and Anytime)いつでもどこでも仕事ができる働き方」と、地域での社会貢献活動も含むVacation(バケーション)を掛け合わせた『WAAcation(高浜版ワーケーション)』として取り組んでいきます。
9月からワーケーションの受け入れを再開する予定でしたが、県内での新型コロナ感染症拡大を受け、10月まで延期。9月はオンラインのみのセッションを行いました。
WAAcationは、訪れる側にだけ利点があるのではなく、受け入れる町にも「通年型の新たな観光スタイルの創出」「地域オフィス誘致」、そして「地域以外の多様な人との出会いや共創のチャンス」を得るという利点があります。今回のセッションは、オンラインという、どこからでも多様な人が参加できる利点を最大化し、高浜町の魅力をとことん紹介するとともに、高浜人と働き方に関心が高い人とのつながりを創り、次のアクションを双方向で目指すきっかけになればと企画しました。
9月20日 20:00 ~ 22:00
オンラインセッション第4回 テーマは「ローカルヒーロー釈宗演とZEN(禅、然、膳、善、全…)」
【 ゲストのご紹介 】
島田 由香 さん(Yuka Shimada)
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長。1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GEにて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLP®トレーナー。
澁谷まりえ さん(Marie Shibuya)
宮城県仙台市生まれ。東京都墨田区在住。
2018年株式会社つながると創業。仕事は、独自のマルマルメソッドを使った企業向けコンサル・講演・研修・経営者、個人事業主コーチング・こども教育など。基本的には、会社と個人がゴールに近づき、関わる人がエンパワーメントするお手伝いをしている。
Team WAA!では高浜町のワーケーションにも関わらせていただいている中で、「釈宗演」について知る機会があり、大ファンになってしまった!
書家 角(Kaku)角谷有紀 さん(Naoki Kakutani)
1983 年5月26日生 福井県高浜町 在住。
幼少より書の道へ。 「書」と日本の伝統的な紙染め技法「墨流し」を合わせ、文字の持つ意味を 模様と組み合わせて表現する現代書作家として活動している。制作した作品を国内外問わず、現代アート展に出展販売。2018 年フランス パリで開催された JAPANEXPO に出演・出展 商品題字・番組題字・店舗看板文字揮毫など商業書家としても活動。
伊藤 彰 さん(Akira Ito)
1951年高浜町生まれ。
造船会社勤務を経て、現在は農業に従事。2016年10月に、若狭高浜が生んだ禅僧釈宗演の偉業、凄さを知ってもらおうと町民有志と共に顕彰活動を開始。顕彰会の会長に選ばれる。釈宗演没100年目に当たる2018年には、座禅体験等を行うイベント「釈宗演禅三昧のつどい」、顕彰碑の設置、現円覚寺派の横田南嶺管長による記念講演会等を実施。
【 モデレーター 】
野村 つとむ さん(Tsutomu Nomura)
東京生まれ、埼玉育ち。1999年より地方の建設コンサルタント。2007年よりフリーランス。2013年より福井県高浜町役場(行政マン)。観光振興、中心市街地活性化、NPO・農業生産法人設立、コミュニティづくり、6次産業化支援など、住民参加のまちづくり・事業起こしを、地方の現場で携わる。soil(土) soul(心) society(地域)を大切に、空間のチカラを信じ、風土と対話するようにデザインするランドスケープデザイナーを目指している。
【 本 編 】
WAAcation WEEKのすべてのセッションでご登場いただいているウイークゲストの島田由香さん。島田さんが取締役・人事総務本部長を務めていらっしゃるユニリーバは『よりよい明日をつくるために』を理念とし、サスティナブルな暮らしを当たり前にしていくことを目標とされている会社です。働く場所や時間を社員が自由に選択できるWAA!の制度が導入されているのもユニリーバの特徴。さらに、地方でワーケーションをしながら地域創生や課題解決にも貢献する『地域deWAA!』という働き方のスタイルもスタートしています。島田さんは、このWAA!制度の発案から導入、さらには運営までを行うスペシャリストで、豊かで幸せな人生へのナビゲーターとして活躍されています。この日のセッションでは、特にマインドフルネスNPLトレーナーとしての視点から、貴重な意見をいただきました。
▼つながり、幸せ、マインドフルネス
島田:
「人の心や気持ち、感情などに小さい頃から興味がありました。モチベーションやリーダーシップ、人が集まる企業、より良い場所。それはなんなのか、どんなものなのか。それってひとりひとりが良くあることなんじゃない?とか、そんなことを考えています。今日のテーマは『ZEN』ということで、すごく楽しみにしています。釈宗演さんが10歳のときにはじめて修行に行ったといわれている京都の妙心寺。そこの川上全龍さんとは、いろいろなところでご一緒させていただいて。このご縁から考えても、高浜と私には、何か深い結びつきがあったんだなと感じています。」
澁谷:
「もともとは島田さんと野村さんとご縁があって、そのときに高浜をちゃんと知ったんですけど、いまや高浜LOVEな感じになっちゃっています。それで『ZEN』という本を紹介してもらって読んだんですが、すごくハマってしまって。私は『株式会社つながると」という会社を『マルでつながって、マルマルな世界をつくる』というテーマでやっています。実は、自分の心がマルじゃなかった時代があったんですが、人や物や本などの出会いで心が整えられたら、すべてがHAPPYに見えた。自分のすべてを受け入れる、承認するってことができたら、もっとみんなHAPPYになれるんじゃないかな。そういう世の中になるためのお手伝いをさせてもらっています。』
▼書で伝える『ZEN』の心
角谷:
「書家の角谷です。水に色を垂らし、高浜の風が描き出した模様を紙にのせ、そこに書を書くという墨流しを行っています。お名前を書かせていただくこともよくあるんですが、ひとりひとりカラーや模様を変えて、それぞれのイメージで書かせていただいています。釈宗演さんをイメージした書には、円相と禅、そしてZENという文字を一緒に描いています。この書は賞をいただいて、海外を旅するという、まるで釈宗演さんご本人のような動きをしたんですよ。思い入れも深いです。海外のチームにも所属していて、定期的に展示会などにも出したりしています。墨流しはワークショップも行っていますので、また体験してみてください。それ以外には、ステージパフォーマンスをしたり、高浜のお店の看板に文字を提供させていただくこともあります。」
角谷さんのワークショップについては、ゲストの澁谷さんをはじめ、チャットでも『やりたい』と話題に。予約制で、大人の方は3000円(体験時間約1時間半)、高校生以下なら1000円で受けていただけるそうです。なんと、おひとりからでもOKなのだとか。もとは高浜町役場の職員だった角谷さん。自分自身の変化、覚悟、そしてタイミングが揃ったことが、書道家として立ち上がる分岐点となったのだそうです。
角谷:
「もともと書道は4歳からやっていたんですが、社会人となり、なかなか趣味の域を超えて継続するのは難しかったです。そんなときに自宅療養、そして入院という出来事があったんです。自宅でできること、自分にできることってなんなんだろうって考えたときに、やっぱり書道がやりたいと。自宅でも病院でもずっと書いていました。病院では自分の書を見てもらう機会もあったので、そういうことが重なって、どんどん書道に対する気持ちが高まっていったんですよね。」
▼どんな人だった?釈宗演を知る
伊藤:
「釈宗演顕彰会の伊藤です。造船会社で務めていたんですが、いまは農業をやっています。高浜に釈宗演さんがいたことってあまり知られていないので、一昨年の釈宗演さん100回忌をきっかけに顕彰会をつくりました。禅や釈宗演さんにちなんだイベント・活動もいくつか行いました。文化祭のときに手作りのパンフレットを配ったり、町内の道路沿いに看板を立てたり、高浜中学校の美術部がつくってくれた宗演さんの紙芝居を小学生に披露したり。ほかにも、顕彰碑を建てたり、講演会を開いたり、釈宗演さんを知ってもらうために、いろいろやりました。あと、釈宗演の歴史を巡る日帰りバスツアー、釈宗演禅三昧のつどいなど、観光を兼ねたツアーも計画しました。いまも広報をしたり、いろいろと活動をしています。」
野村:
「釈宗演さんは鈴木大拙の師であった人で、夏目漱石にも影響を与えた人だと言われています。福沢諭吉とも非常に親しくしされていたとか。1859年に高浜に生まれ、10歳のときに京都の妙心寺に入られます。のちに慶應義塾に入学され、セイロン(現スリランカ)に留学されたのが大きな転機だったのかなと。そして1893年、シカゴ万国宗教者大会に日本代表として出場されて、はじめて禅をZENとして世界に発信されました。このときに原稿の翻訳を担当したのが鈴木大拙。鈴木大拙は、そのままアメリカに残ってZENを広めるよう指示を受けて、実行しました。なので、いまアメリカではすごく有名になっていますよね。この大会後も何度か海外で布教などを行ってらっしゃいましたが、1919年、59歳でお亡くなりになりました。」
宗演さんは書や絵もお書きになったことが知られており、自筆の達磨の絵は目にすることも多く有名です。また、スランプに陥った画家を励ましたり、セイロンに発つときに山岡鉄舟から『もっと馬鹿になれ』と言われたり、逸話もたくさん。釈宗演の生き様にスポットを当てた書籍もたくさん出されています。
澁谷:
「世界にはじめて禅をZENとして紹介したっていう派手な活動部分だけじゃなくて、禅僧として当たり前のことを、本当にコツコツ、しっかりと歩んでこられた方なんだなって思いました。」
島田:
「なにより伊藤さんのパッション(情熱)に尊敬。生まれた地域の歴史をつくってきた人に対して、想いが強い。私が釈宗演という方をはじめて知ったとき、えっ、鈴木大拙さんの師なの?って驚きが一番だった。しかもZENという表現をはじめに使われた方なの?って。やっぱり高浜って自然、薬草の宝庫である青葉山、そしてZEN。このキーワードですよね。」
角谷:
「書で海外に行くときに釈宗演の話をするってことはなかったんですが、ZENの話はよくさせてもらいます。『ZEN』と言うだけで、話がほぼ通じるんですよ。海外の方もZENに親しんでおられるってイメージがあります。僕のワークショップに来られる海外のお客様も日本の書道とか体験とか、そういうものを通じてZENを感じたいと。マインドフルネスとかZEN体験を少しでもしたいって考えている方がほとんどですね。」
▼呼吸を意識する、内側を整える
角谷:
「先ほど伊藤さんのお話にもあった禅の記念講演、そのあとの交流会で書のパフォーマンスをさせていただいたんですが、そのときに呼吸についてのご指導がありまして。呼吸を学ぶと書き方も変わると。」
島田:
「呼吸と目(見る)っていうのは、心臓などの臓器とは違って、自分でコントロールできるものですよね。この呼吸と目に意識を向けていくことがマインドフルネスに良い影響を与えている。特に呼吸は、身体の内側と外側を直接つなぐもので、すごく大切だと思っています。吸うときには外側のエネルギーを取り入れて、吐くときは内側の穢れやいらないものへの執着心など、手放していいものを息と一緒に出す。呼吸について指摘をもらったと角谷さんがおっしゃっていましたが、それを意識することで、さらに内側が整っていくよという、すごく素敵なアドバイスだなって思います。実はいま12秒から20秒、目をつむって呼吸に意識を向けるというだけで脳に良い影響を与えることがリサーチでわかっているんですよ。」
▼共感を呼ぶ、釈宗演のモットー
最後に伊藤さんより釈宗演さんの座右の銘(9カ条)の紹介が。本日のゲストがそれぞれ、どの座右の銘に心が惹かれたか、それを教えてもらいました。
伊藤:
「朝起きて、線香一本分、静かに、という銘ですね。実際は15分~20分ほどで良いらしいのですが、それでもちょっと難しいですよね。早起きして自分自身を整えてから仕事にってできたらいいなと思うんですけど。」
《早起(そうき)まだ衣を改めず静坐一烓香(せいざいっしゅこう)》
早起きして、40分~45分ほど(線香一本分くらい)線香の香りに包まれて、背筋を伸ばし肩の力を抜いて座り、静かな時間を過ごす
澁谷:
「子ども心を忘れないという銘ですね。大人になると人の目を気にしちゃう。でも、子どもみたいに、ありのままに泣いて、笑って、遊んで、こういう部分もやっぱり大切だなと。」
《丈夫の気を負い、小児の心を抱く》
立派な大人の気概を持ちつつ、子どものように純真無垢な心も忘れないようにする
角谷:
「僕も伊藤さんと同じですね。あと神様に手を合わせるという銘。いま、ちょっと近いこともやってるので、すごく自分にしっくりきます。」
《既に衣帯(えたい)を著(つ)くれば必ず神仏に礼す》
着物を着換えたら、まず神様仏様に手を合わせる
島田:
「私はね、妄りに過去を想うことなくって銘です。これズバリ一緒だ!ってすごく共感しました。」
《妄(みだ)りに過去を想うことなく遠く将来を慮(おもんばか)れ》
過去にとらわれず、これからどうするかを考える
野村:
「いまコロナという社会そのものが変わる荒波のなか、江戸から明治へ変わる激動の時代を生きた釈宗演さんのコツコツと自分の想いを広げていく行動力に、感じるものが多かったです。そして呼吸とか、身近なものにもヒントがあることに気づけた。とても良い時間だったと思います。」
釈宗演さんの生き様は感動を教えてくれる。その想いや信念に触れることは、多くの後世の偉人を誕生させるキーポイントになったと言っても過言ではないでしょう。高浜町も宗演さんと確かなつながりを持っています。宗演さんが示したZENの世界。それはきっと、高浜町の魅力や楽しさをよりアップさせるキーポイントにもなってくれるでしょう。