応援される人から、応援する人に。
高浜で頑張る人々や活動にスポットライトを当てていきたい。
2014年に奈良県から高浜町に移住、”水辺の事故ゼロ”を目指すライフセーバーとして活躍されている南部裕紀子さん。幼少の頃より競泳をはじめ、大学時代にJapan Openで50mバタフライ5位入賞。社会人からライフセービング競技を始め、全日本4連覇、さらにさらに世界大会でもメダルを獲得されています。
現在は競技の第一線から退き、ご結婚もされた南部さん。アスリート時代を経て、いま感じる心境の変化、そして興味のある活動、高浜町の未来についてなど、いろいろ聞いてみました。
海だけじゃなかった。山を知って、また高浜が好きになった。
南部さんが高浜に移住を決めたきっかけは、高浜の海。朝起きて、海を見ながら朝食をとることを最高の贅沢!と笑顔で話してくれるくらいですから、高浜の海に心底ほれ込んで移住されたことがわかります。ですが、結婚を機に、気持ちに変化があったのだとか。
南部:
「現役選手のときは、もう海!海!で、このきれいな高浜の海のことしか見てなかった。でも、結婚して、山(高野地区)のほうに住むことになって。嫁ぎ先が兼業農家だったので、畑仕事をお手伝いするうちに、考え方がガラッと変わったんです。高浜、山もすごい!って。自分が作った野菜を食べれるって、もしかして究極の贅沢なんじゃないか?と思ったんです。自給自足の環境が、”生きる”という意味で、本当にスゴイ事なんだなと。畑の土が火山灰の入った粘り気のある赤土で、ごぼうとか里芋とか、本当に美味しいんです!」
南部:
「結婚後、森は海の恋人という言葉を知りました。漁師さんから伺ったのですが、高浜の関屋川の河口と海が繋がる所は、実は山から下りてきた湧き水が混じっているんですって。雨水が、土や木の根で濾過され、山のミネラルが溶け込んだ湧き水が海につながるところで混ざる。そのポイントって、海水の栄養価が高くなり、本当に美味しいカキとかが獲れるそうなんです。ああ、豊かな山があるから、美しい海があるんやって実感しました。海だけじゃない。この高浜という町自体が宝なんやなぁと。」
あらためて高浜の自然の魅力、山と海の恵みに気づいたという南部さん。そして、その想いはこの地に住む人々にも向けられています。
これから、私にできることはなんだろう?それは、応援すること。
現在は、高浜の海で安全に楽しく遊んでもらえるよう、浮力のあるボードに乗って漕ぎながら海上散歩できるSUP(stand up paddle)体験や、SUPの上でYOGAをするSUPYOGAなど、海辺のアクティビティー等を提供している南部さん。町内外、多くの人に海の楽しさを伝えていましたが、昨年はやはり新型コロナウイルスの影響は少なからずあったといいます。ですが、それが町全体に目を向ける「きっかけ」ともなったのだとか。
南部:
「昨年は自分を見つめ直し、これからどう生きていきたいのか?を考えさせられた一年やったなと。毎年夏は、仕事にライフセービング活動にと余裕がなかったのですが、コロナで活動制限もあり、時間に余裕ができました。ありがたいことに新たな分野のお仕事をいただいたり、町の中の取り組みを知る機会が増えました。ずっと行きたかったお店とかきれいな場所とかも巡ったりして。そうしたら、今まで知らなかった『高浜で頑張っている人や活動』にたくさん出会いました。みんな想いや目標があり、一生懸命で、でも問題もたくさんあったり。理想と現実の差を近づけるためにどうすればいいのか。なかなか難しいですよね。町ために、ライフセービング活動以外で、何かお役に立てることはないか考えました。」
南部さんもライフセービング活動の中で、理想と現実の差や重圧を過度に感じてしまう時期もあったそう。人の命を助ける活動であるからこそのジレンマですよね。外から見ているだけではわからない、けれど切実な問題。まずは、活動をみんなに知ってもらうことが、問題解決の糸口になるかもしれないと、南部さんは言います。
▼選手時代の練習風景
南部:
「自分たちの活動を知ってもらう為の方法はいくつかあります。私が日本一を目指したのも、若狭和田ビーチやライフセービング活動を多くの方に知ってもらうための1つの手段でした。周りの人たちの温かさや応援は、すごく心強いし、元気の素になると思うんです。まずは、活動や想いを理解してもらうことで、より良い関係性を築いていけたらなぁと思います。じゃあ、どうやって知ってもらうか?どうやって伝えていくか?そういう部分をクリアにしていくお手伝いが私にもできないかなって思うんです。いままで応援していただいた分、今度はこちらがいっぱい応援したい。」
応援される人から応援する人へ。町のみんなと寄り添い、協力して、未来の高浜を盛りあげていきたいと話してくれました。
高浜で生きる人たちの物語を、世界へ伝えるお手伝いを
南部:
「2年ほど前から、月に一度のビーチクリーン活動を始めました。3人から始まった活動ですが、今では多くの方がご参加くださっています。私は、流木や藻はゴミではなく、自然物と考えています。皆さんと拾うゴミは、主に自然に還らないプラスチックゴミです。活動を継続する中で、ただ集めるだけではなく、他に何かできることはないか考えていた時、海ゴミのペットボトルを再利用し、サングラスを作るプロジェクトに参加させていただく機会がありました。そのサングラスが最近完成したんです。プロジェクトの趣旨をご理解いただいた多くの方が参加してくださいました。こういう活動って、絶対に一人ではきないことですし、リサイクル時の機械の塩害リスクを背負ってご協力くださる企業さんにも感謝です。高浜で行われているこうした活動も、しっかり伝えていけたらと思っています。」
▼ビーチクリーン活動の様子 (Photo:drami works)
さらに、南部さんは町民が立ち上げた、高浜総合型クラブ「HIGH-BEACH(ハイビーチ)」についても熱い想いを語ってくれました。ハイビーチとは、地元人の有志で立ち上げられたクラブで、老若男女問わず幅広い世代でスポーツや文化活動に気軽に参加できる場の提供を目指している組織です。
▼HIGH-BEACH サーフィン教室の様子
▼HIGH-BEACH ラグビー教室の様子
(Photo:南部さん)
南部:
「ハイビーチが設立されたと聞いて、嬉しかったことの1つは、立ち上げメンバーが地元の方ということです。この町で生まれ育ったからこそ、子ども達のために、高浜町のために、課題を乗り越え、良い循環を生み出していこうという想いが伝わってきます。そういった町民皆さんの活動を、より多くの方に知ってもらうために、何かの形で応援させていただけたらと考えていました。
ライフセーバーは他県からの移住者が多く、ライフセーバー達だけでは担いきれない事があったり、役割を請け負う事が難しいと肌で感じたこともあります。でも、地元の人たちの頑張っている姿を、地元の方が応援できたら、子どもたちが、将来この町で頑張りたい!って思う指針にもなりますよね。」
高浜で頑張っている人たちや活動をフォーカスしていきたい!という南部さん。高浜に住む人たちが好き、高浜を良くしたいという強い想いが伝わってきます。これからピン!トでは、南部さんにライター「YUKIKO」として、様々な高浜の人を、取り組みを、想いを紹介していただきます。移住者でありながら、高浜にほれ込んでいる南部さんならではの目線で描かれる町の顔たち。他では聞けない、面白い話もたくさん出てきそうですね。