アート日和の里山散歩
【DAY1】~観自庵国際アート展~
よく晴れた気持ちのいい土曜日。私は内浦地区にある五色山美術館に向かいました。目的は、「観自庵(かんじあん)国際アート展」。
今年で7回目を迎える観自庵国際アート展は、高浜の高野地区にある築100年以上の古民家「観自庵」で行われ、日本、韓国、チェコ、アメリカ、イギリスなど様々な国出身のアーティストが作品を展示しています。
今年は五色山美術館でワークショップも行われるということで、先にそちらへ。
韓国出身の造形作家で、観自庵プロジェクトの代表でもある、金明姫(キム・ヨンヒ)さんのワークショップが始まっていました。こどもたちが和紙に色を塗って、それに何やら文字を書いて石を包んでいます。
「海からのメッセージ、海へのメッセージ」というワークショップで、石は高浜の海で拾った石だそう。
子どもたちはどんなメッセージを書いているんだろう。同じものがひとつもなくて、ギュッとしていて愛らしい。
私もひとつ作らせてもらいました。完成した私の石ころは、くすんだ色に、均等に巻かれた糸。なんだか可愛げがなく思える…。(どれか探さないでください)
それにしても、子どもたちは本当に楽しそう。自由で大胆。だから生み出す色も面白い。やっぱり子どもはアーティストだなぁと感じたのでした。
そして午後からはチェコ出身の写真作家、シュヴァーブ・トムさんのワークショップ「サイアノタイプ(青写真)に挑戦」へ。
サイアノタイプとは日光写真ともいい、鉄塩の化学反応利用した写真の技法。19世紀に発明され、光の明暗が青く発光するため青写真とも呼ばれるそう。
上の写真のモチーフは、葉っぱとアーモンドと砂。なぜこうなるのか、ひとくちに説明できないのですが、言われた通り紙に薬品をきれいに塗って。乾いたら好きなモチーフを乗せ、日光をあてて露出させます。
そして水で薬液を洗い、さらに漂白。すると不思議、不思議。美しい青色になるんですね〜。
深く鮮やかな青色に変化する瞬間がすごく楽しい。露出の時間を変えたり、モチーフの厚みや質感によって様々な表現ができます。子どもたちより、大人の私のほうが夢中になってしまったワークショップでした。
次にワークショップ会場を離れ、高野地区にある観自庵国際アート展へ。毎年道に迷ってしまうんですが、今年は順調にたどり着けるだろうか…不安に思いながらまずは第一会場の清住寺へ向かうと
かばくんが野菜を売っている!窓枠に妙にハマっていて面白い。抱きつきたくような、ぽってりとしたフォルムのかばくんは、造形作家の松浦つかささんの作品。
ワークショップでお会いしたトムさんの作品もありました。古い和室に立方体の雪景色。なんだか不思議で、少し切ない感じがするのはなんでだろう。
静かな時間をひとしきり楽しんだら、次に向かうのはメイン会場の観自庵。青葉山の中腹にある集落、高野地区ならではの自然にあふれた道をてくてく。ミニ棚田。赤いボンボンの花。落ちかけの柿。頭を空っぽにして歩いていると、普段気にもとめないささやかなものに癒される…。
小道を抜けると、到着。趣のあるこの古民家が「観自庵」です。
観自庵プロジェクトは、アートをきっかけにたくさんの人が集まる場所にしたい。国籍も関係なく、子どもからお年寄りまで集える場所にしたいという声からはじまったそうです。築数百年の古民家を改修し、金さんをはじめとする移住者や、Uターンした女性たち、地元農業者の方を中心に活動されています。
絵画、写真、書、彫刻、現代アート。観自庵では、作品が暮らしに溶け込んだように展示されているのがかっこいい。
金さんのピースマスクが印象的。みんな同じ真っ白な顔、でも同じ顔はひとつもない。差別のない平和な世界を表現されています。
ひとつひとつの作品に物語があるんだけれど、それを読み解くのは、なかなか難しい。でも、色がきれいだな~とか、変わった質感だな~とか、自由に感じて、素直に楽しんだらいいんだと思います。私は年に1度、観自庵アート展に出かける日は、少し格好つけた服を着て、アートな時間をしみじみと楽しむことにしています。
最近は気軽にお出かけできず、もやもやしていたけれど、久しぶりに頭の中にスーッと風が通ったような1日でした。自然の力か?アートの力か?どちらにしても感謝、感謝。