変わりゆく高浜の漁業。持続可能な未来に向けて、何をチャレンジする?
海辺の町、漁師町として栄えてきた高浜。ですが、現在、町の漁業は漁業者の高齢化に漁業の担い手不足、漁獲量の減少、さらに魚食離れが進み、魚価は低迷…と、さまざまな問題を抱えています。
Photo by BLUE LABEL
この現状を回復させるため、令和元年11月「はもと加工販売所」がオープン。魚を美味しく加工することで価値を高め、町内外に関わらず魚の売り場を広げていく役割を担っています。
▼高浜漁港で揚った魚介を新鮮なうちに加工する、はもと加工販売所
さらに令和3年7月には、海の6次産業施設「魚と旅するフィッシュマーケットUMIKARA」がオープン。町で獲れた魚の市場となり、新しい魚食を提案する施設として、様々な活動が行われています。
▼魚と旅するマーケット、UMIKARA
UMIKARA・はもと加工販売所の主な活動その1
魚の美味しさを伝える新しい商品の開発
高浜町内の漁港で水揚げされた低利用魚を使用した商品、手軽に食べられる加工品、斬新な味付けの商品など、様々なテーマから「新しい魚食の提案」が行われています。
また、町で採れるシソの茎部分(ほとんど廃棄となっていた部分)をマハタのエサに加え、味などに付加価値をつくりだすSDGsに取り組んだ活動も行われています。
UMIKARA・はもと加工販売所の主な活動その2
高浜の魚の美味しさを伝える活動と販路開拓
出向宣伝やECサイトの運営で、高浜の魚の美味しさを広く伝える活動も積極的に行われています。また、町内や近隣市町だけでなく、全国のセレクトショップやアンテナショップなどとつながりを持ち、多くの人に高浜の海鮮加工品を提供できるよう努められています。
UMIKARA ECサイトhttps://shop.umikara.co.jp/
UMIKARA・はもと加工販売所の主な活動その3
魚や魚介、海をテーマにしたイベントの開催
UMIKARAでは、オープニングイベントのように盛大な催しはもちろん、毎月の定例イベント(昼市)も開催。UMIKARAへ頻繁に足を運び、漁業や魚を身近に感じてもらうためのイベントです。
時には地元の漁師さんとも触れ合えたり、好評を呼んでいます。
このように様々なチャレンジや活動が行われているなか、令和5年7月に、衛生管理のできる市場も完成予定。これで、獲る、加工する、売るというすべてのハード面が整い、新しい「高浜漁港」としてグランドオープンとなります。次なるステージとして、これらの漁港施設を生かした本格的な漁業再興を考えていかなければいけません。
持続可能な漁業を考える「サステナFISH座談会」を開催
若い漁師を育て、海を耕し、魚介類が集まる漁場をつくりあげ、そして価値のある美味しい魚食を発信しつづけていく高浜町となるために、いま、どんな思想、チャレンジが必要なのでしょうか。そのヒントを探るために、3月7日から11日に開催された、ワーケーションウィーク「つながりWeek」で、『サステナFISH座談会』が行われました。
座談会ではFRaUSDGsの共創プロデューサーで、高浜町ソーシャルグッドアンバサダーの石川淳哉さん、
東京のトップシェフ約30名と共に、⽇本の⽔産資源を守り⾷⽂化を未来につなぐための啓発活動を展開する一般社団法人Chefs for the Blue代表理事 佐々木ひろこさんが参加。
Chefs for the Blueでは、数多くのシェフと共に消費者の立場から食を考え、伝え、魚を美味しい料理という喜ばれるカタチで人に提供していく活動が行われており、多くの企業や自治体、メディアとのコラボを実現されています。(Chefs for the BlueのHPはこちら)
高浜町からは、はもと加工販売所・地域商社まちからの名里裕介さん、高浜町産業振興課の吉田課長、そして漁業の現場で生きる漁師さんたちが参加。さらに、福井県立大学の海洋生物資源学部先端増養殖科の富永修教授とその学生たちも座談会に来られていました。
付加価値?地元での展開?高浜の漁業に最も必要なのは?
座談会では漁業再興のヒントのひとつとして、魚の価値アップ、付加価値をつけるということが挙げられました。
● 加工品も良いが、鮮魚の売り方にも視点をあてればどうか。
● 定置網漁で獲れた魚の処理(血抜きなど)にこだわり、最高の品を求める人へ、価値あるものとして提供する。
● 獲る前から買い手が決まっており、その買い手の要求に応える売買システムで魚を売るという手もある。
● どんな海で、どんな漁を、どんな風に行っているかなど、漁師さんの想いが伝わる商品には、特に料理人の興味をひく。
● 獲る、加工する、売る(食べる)という漁業のすべてが一か所に集まっているところは少ない。その強みを生かした戦略を立てるのはどうか。
● 食べられない魚が揚がったときは海に戻したり、廃棄したりせず、それを肥料やペットフードに活用にするなど、別の利用法を考えてみては?
そうした提案やアドバイスには「なるほど」と納得できるものの、町や漁業の現場、座談会に参加していた人たちからは簡単にはトライできない事業や悩みが…。
● 魚の処理にとことん手をかけても、値段はそこまで変わらない。ただ手間だけが増えてしまう。
● 価値ばかりアップしても、たくさんの買い手がいなければ、結局「売れない」という状況になるのでは?
● 一般の消費者たちは、漁師さんの想いや漁業のストーリーにあまり興味はないかも。
● 町で獲れる食べられない魚は毒があることが理由の場合が多く、ペットフードにも適していない。
● 町外、全国に向けて付加価値をあげていくのも良いが、町民や町へ観光に来た人に対して魚の美味しさをアピールしたい。
● 獲れた魚がその日のうちに近隣住民や町の飲食店の机に並ぶ、町内で展開されるシステムを強化させたい。
漁業再興に真剣であるからこそ、白熱した議論が繰り広げられました。わかったことは、付加価値のある魚を全国に展開するにしても、町内や近隣市町での展開を強化するにしても「仕掛け人」となる人や機関の存在が必要だということ。その仕掛けがなにより難しいということでした。
なにより漁業の担い手となる漁師不足の問題が深刻です。どんなことにチャレンジをするにしても、漁師がいなければ成り立たない。けれど漁業が発展しなければ漁師になろうという人も増えない。簡単には解決できない問題だからこそ、これからも意見を出し合い、共有し、協力していくことの大切さを改めて感じることができる会だったと思います。
まずは一歩ずつ、確実に進んでいきたい。
それぞれの立場から率直な意見を出し合ったサステナフィッシュ座談会。明確な答えは出なくとも、とても有意義な時間だったのではないでしょうか。座談会に参加されていた、はもと加工販売所・地域商社まちからの名里さんも「獲れる魚種も量もその日、その日で変わる漁業だからこそ『先払いで、獲れたらすぐお渡し』という売買システムを取り入れるのもいいかなと思った。まずは、ふるさと納税などを活用して、そのシステムに挑戦してみたい。」と、座談会で新しいチャレンジへの意欲が高まったと話されていました。
今夏、グランドオープンを迎える高浜漁港。まずは、多くの人に足を運んでいただき、変わりゆく高浜漁港の姿を見てほしいと思います。