2023.9.10
より良い保育を目指して、高め合う保育士たち。
幼児期の子どもたちを見守り、健やかな成長をサポートしてくれる高浜町の保育士たち。実は、私たちが知らないところでも、保育に向き合い、保育の質をあげるために活動されています。
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その活動のひとつが、保育士たちがお互いの保育を見せ合い、悩みや保育方針について話し合う『公開保育』です。
保育士同士が高め合い、小学校や教育委員会と連携しながら行われる高浜の公開保育は、近隣市町からモデルケースとされるほど、高く評価されています。そんな公開保育の様子を見学させていただくため、和田保育所へ行ってきました。
より日常の保育風景を。気づきが生まれる公開保育。
公開保育には町内の保育所、こども園から数人の保育士が参加されていました。ほかにも、福井県幼児教育アドバイザーや小学校へのスムーズな修学(保幼小接続)のために小学校の先生も参加。参加者がそれぞれの観点から、保育を見学します。
高浜の公開保育では、保育所内を自由に見てまわれます。保育のワンシーンだけを公開するのではなく、より日常に近い子どもたちの様子を見てもらえるように考えられています。
いま保育士たちが見学しているのは、それぞれのクラスで行われている「みんなの時間」です。担任の保育士と子どもたちで「この遊びはどうだった?」「お友だちはどんな気持ちだったかな?」などを話して、日常や遊びのなかで見つけた新しい発見、お友だちとの関わり方などを、みんなで共有します。
「みんなの時間」で、子どもたちはどんなことに興味があるのか、どんな気持ちで毎日を過ごしているのか、担任の保育士たちは様々なことを知ることができます。子どもたちの主体性を大切にした保育を行うために、とても重要な時間となっているようです。
意見交換会で悩みを相談、情報を共有。
午後になると、アドバイザーとして参加されている福井大学の岸野麻衣先生の進行で、保育士たちの意見交換会が行われます。
▲岸野麻衣さん 福井大学 教育・人文社会系部門 教員養成領域 教師教育講座 教授
この意見交換会は、保育士たちがそれぞれの悩みや課題、保育方針について話し合う会です。学校の先生も参加されるので、小学校へ引き継いでいくための情報共有の場にもなっています。
経験豊かな熟練保育士さんと新しい感性を持った若手の保育士さんなど、年齢や考え方が違う人同士が想いを伝え合える、とても貴重な会。アドバイザーの岸野先生も、公立の保育所で、こんな風に意見を出し合う会を定期的に行っているところはほとんどない、高浜はすごく頑張っているとおっしゃっていました。
意見交換会では午前中の公開保育についてはもちろん、保育所で行った保育の見直しや新しい試みなど、様々な情報の共有が行われるのですが、そこで公開保育をされた和田保育所の部屋割りについての話がありました。
和田保育所では、年齢ごとに適した保育環境を整えるために、3歳未満児と3歳以上児の部屋を離したのですが、その結果、子どもたちが落ち着いて遊べるようになったそうです。
その後、保育士たちが2班にわかれて話し合い。子どもたちの興味の幅を広げるにはどうすればいいか、譲り合いの気持ちを育てるにはどうしたらいいか、そんな保育士たちの様々な悩みや課題について、みんなで考えていきます。積極的に質問し合い、お互いの保育を高め合おうとする保育士たち。その真剣な想いが伝わってきました。
いまや高浜の保育の向上に欠かせないものとなっている公開保育ですが、そのはじまりは平成27年。今年で9年目を迎えています。
主体性のある保育を目指して、公開保育がスタート。
公開保育がはじまった当初は、ちょうど集団での「設定保育(一斉保育)」ではなく、やらなければいけないことに子どもたちの主体性を組み込んだ「自由保育」を行っていくという方向に保育の考え方が変化しはじめたときでした。
子どもたちの主体性を育てること、小学校へとスムーズにつなげていくこと、保育に携わるみんなが同じ方向を向いていくこと。たくさんの課題をクリアするために、福井大学の岸野麻衣先生に協力を依頼、高浜の公開保育を進めていくことになりました。
まず、保育を公開してくれる若手の保育士が各保育所から集まり「保育実践研究グループぴっか」を結成。公開保育を軸とした、保育の質をあげるための研究をはじめました。
▼保育実践研究グループぴっか研究発表資料
ちょうど同じ頃に、福井県の幼児教育支援センターが市町幼児教育アドバイザーや園内リーダーの養成研修をはじめ、高浜からも所長や管理職クラスの保育士が受講。保育の現場を支える身近なアドバイザーとして公開保育の取組みを支えます。
課題の解決に向けて、ひとつずつ、一歩ずつ。
公開保育で課題や問題に気づくたびに、岸野先生を中心としたアドバイザーと一緒に見直し、そして改善。一歩ずつ前へ進んできました。例えば、こんな風に。
また、教育委員会や町の小学校へも公開保育や意見交換会の参加をお願いし、保育所と小学校を接続させる場としても成長してきました。
ひとつずつ、一歩ずつ、公開保育のブラッシュアップを続け、保育に向き合い努力する高浜の保育は、高い評価を受けはじめます。高浜と同じ福井県嶺南地方の市町村からモデルケースとして視察を依頼されるほどになった現在も、変わりなく、より充実した公開保育を行えるように努力を続けられています。
主体性のある保育を目指すことにゴールはありません。ですが、少なくとも「〇〇していいですか?」と聞くばかりだった子どもたちが「〇〇したい!」と自分の気持ちを主張するようになってきたといいます。子どもたちの興味や気持ちを受け止め、やらなければならない保育とつなげていく。とても難しいことに一生懸命トライしている保育士たちの姿に、感謝と尊敬の気持ちがあふれました。