2024.1.20
見つけた!こんなところに町の未来
ふくいSDGsパートナー企業「中嶋造園」さんにお話を聞きました。
持続可能な開発目標「SDGs」。その取り組みとして、地域資源を有効に活用し、未来まで守っていく活動が様々な地方で活発化しています。ここ高浜町でも、行政はもちろん、町のいたるところでSDGsに対する意識が高まっています。
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高浜町の馬居寺という地区にある『中嶋造園』さんも、SDGs活動を積極的に行う“ ふくいSDGsパートナー ” に登録されている企業のひとつです。「癒しのある空間づくりのお手伝い」を経営理念に、お庭づくりのプランニングからデザイン提案、管理や剪定など、みどりに関わる全ての事を事業内容としていらっしゃいます。
▼木の温もりと、緑あふれる素敵な事務所
今回は、中嶋造園さんの代表取締役である中嶋正光さんに、緑の空間づくりをベースにしたSDGs活動について、お話を聞きました。
代々受け継がれる「想い」と、時代に合わせた「変化」
中嶋造園さんは開業100年を超える老舗の造園会社。正光さんのひいおじいさんの代から継がれ続け、正光さんで4代目となります。家業を継ぐことを、正光さんは子どもの頃から意識されていたのでしょうか。
▼中嶋正光さん
中嶋:
「家族で世代交代していっていますが、決して家を継ぐことを強制されたということはないんです。祖父は『自分のやりたいことをやりなさい』と言ってくれていましたし。造園業以外の選択肢もあったのですが、結局造園の道を進むことになりました。他の兄弟もみんな造園をやっています。なんででしょうね(笑)」
中嶋造園さんは個人宅の庭づくりだけでなく、公共施設の庭園づくり、植物に関する教室の開催など幅広く取り組まれています。お客さまからの評価も高く、小さなことから大きなことまで、植物のことならとりあえず中嶋造園に!という声もよく耳にするほど。
▼青葉山ハーバルビレッジ(オープン当初)
中嶋:
「お庭づくりのお手伝いは、デザインやプランニングしたものを図面にしてご提案したり、エクステリアまでまとめて任せていただいたり。お客さまそれぞれのニーズに合わせてご対応させていただいています。造園業は剪定だけでなく、植物に栄養をあげたり、きれいなお庭の景観をキープするのも僕らの仕事なんです。」
▼殺虫や植樹なども。小さなことから大きなことまで。
中嶋:
「最近では木の伐採業務も行っています。山の木々を管理するのは森林組合さんがされているのですが、高齢化や担い手不足などもあり、お寺や神社、公共の場所にある大きな木などはうちの会社がお手伝いをさせていただいています。」
中嶋:
「伐採業務をはじめたり、洋式の住宅が増えたことで洋風ガーデンも取り入れたりと、代が変わるごとに、時代に合わせた変化を続けてきました。代々の取締役の感性や想いが積み重なって、幅広い緑づくりが行える、いまの中嶋造園になったと思っています。」
緑と人をつなげるお手伝い。
緑の空間づくりをこだわりたっぷりに行う中嶋造園さん。事業としてだけでなく、まちづくりという観点でも、いろいろなコトに積極的に取り組まれています。その中でも、毎年春に行われる『オープンガーデンin高浜』は、立ち上げ当初から関わりを続けておられます。
オープンガーデンとは、個人の庭を期間限定で一般公開するというもの。「一人でも楽しい庭いじり。100人いればもっと楽しい!」をモットーに、高浜町を中心に活動する庭好きが集まるグループ『オープンガーデンAoba』が中心となって開催しています。
中嶋:
「地域の庭好きの方に声をかけてもらって、一緒に『オープンガーデンAoba』という団体を立ち上げました。花を扱う仕事も多くなってきて、ちょうど中嶋造園としても、お客さんにどんなお庭がつくれるかを見てほしいと思っていましたし、庭のある住まいの魅力を発信できるチャンスだと思い、すぐに参加することにしました。
イベント開始当初は、会社の敷地内に洋風のモデルガーデンをつくって公開していました。「和風の庭造り」の会社というイメージだった中嶋造園ですが、ガーデンの依頼も増えましたね。」
▼中嶋造園さんのモデルガーデン(※現在はありません)
中嶋:
「なかなか人の家のお庭って入れないじゃないですか?オープンガーデンは、他の人の庭づくりのアイディアを知れたり、植物が好きな人同士で情報交換できる良い機会だと、みなさん喜ばれています。年々お庭を開放してくださる参加者も増え、人気のイベントになっています。」
中嶋造園さんでは、他にも地元の小学生と希少植物のオオキンレイカの植栽活動を行うなどの自然学習の実施や、ミニ盆栽作りなどの公民館講座、植栽指導のボランティアなどにも注力されているのだとか。
「緑をつくるだけではなく、緑と人をつなぐ活動を通して、植物や花を好きな人がひとりでも増えてほしい、地域の人の意識改革のお手伝いができれば」と正光さんおっしゃっていました。
景観や自然に配慮した庭づくりを。
中嶋造園さんには造園基幹技能者や一級造園施工管理技士、一級造園技能士など様々な資格を持った方がいらっしゃいますが、環境再生医、自然再生士というちょっと珍しい資格を持った方も在籍されています。そのため、確かな技術を提供できるのはもちろん、周囲の景観や自然環境に配慮した植物の選定や家主さんへの庭づくりのアドバイスまで、細やかなサービスも行えているそうです。
中嶋:
「僕は自然再生士という資格を持っているので『近隣の住宅の為に、増えすぎる植物はやめときましょう』とか『背景の山や自然に溶け込むお庭のつくり方ってこうですよ』とか、庭づくりのアドバイスもせてもらっています。
以前、オープンガーデンの参加者の方から、お庭の老朽化した階段を作り替えたいとご相談いただいて。廃材の煉瓦を使ったデザインをご提案しました。お庭にもピッタリで、すごく喜んでいただけました。環境に配慮した庭づくりを意識する家主さんも増えてきて、僕も嬉しいです。」
▼廃材の煉瓦を使った階段(花番地)
中嶋:
「最近、カメムシが多いじゃないですか?カメムシって果物とかの実を吸うみたいなんですけど。いままで春に食べるものがなかったものが、杉の花粉の実を吸うようになったので、どんどん増えてるってことらしいです。杉の放置とかが原因のひとつにもなってるんじゃないかな…。」
中嶋:
「伐採業務の話でもしましたが、担い手不足などで管理できていない山が増えて、自然環境が変わってしまっている。それの改善をどうしていったらいいかを考えていくのも自然再生士の仕事かなと思っています。
杉やヒノキを切ったあとに何を植えていったらいいのか、本来の自然のカタチに近づけるにはどうしたらいいのか、未来の子どもたちにこの自然を残していくにはどうしたらいいか、造園の仕事を通して向き合い続けたいです。」
造園業という仕事の枠を超えて、美しい緑にあふれた未来を考える正光さん。造園業自体がSDGs活動、これからも地域の緑をみんなで守っていきたいと想いを語ってくださいました。
緑と地域に寄り添う『中嶋造園』さん。これからも素敵なお庭をたくさんつくっていってください。