2024.11.15
安心の小学校生活へつなげる、高浜町の「保幼小接続」
高浜町では、こども園や保育所での教育や生活をスムーズに小学校につなげるための「保幼小接続(ほようしょうせつぞく)」に力をいれています。
保幼小接続とは、その名の通り、保育所・幼稚園・こども園・小学校が連携し、幼児教育と小学校などの児童教育を円滑に接続することです。
具体的な取り組みとして、園児の小学校体験入学や、認定こども園・保育所の公開保育に小学校教員や教育委員会が参加し、お互いに子どもの過ごし方や学びについて共有、理解を深める意見交換会などを行っています。
学習の段差をゆるやかに。
保幼小接続を行う理由。
高浜町が保幼小接続を行う最大の理由は、こども園・保育所と小学校の「学習の段差」をゆるやかにすること。
遊びのなかで学び、時間の区切りもゆっくりとした保幼生活と座学中心で教科学習を行う小学校生活では、変化が大きく、子どもたちがとまどってしまいます。
また、いままで最年長クラスで、しっかり者のお兄さん、お姉さんという立場だった子どもたちが、最年少の1年生になって『できない』ことを前提とされてしまうことから自尊心や意欲が下がってしまうことも。
高浜町の子育て施策パンフレット「みらい」より
保幼小接続は、こういった上り、下りの「段差」をできるだけ緩やかにするための道づくりのようなもの。こども園・保育所と小学校がしっかり情報共有・連携することで、子どもたちの進学をサポートしています。
遊びのなかの
「学び」を見つけ、育む。
子どもたちの成長を木で表すと、幼児期は未来に必要とされる力を育む(根っこ)の期間といわれています。こども園・保育所の子どもたちは、毎日楽しく遊びながら、いろいろなことを学んでいるのです。
高浜町の子育て施策パンフレット「みらい」より
こども園・保育所の子どもたちは、毎日、成長の木の根っこを広げています。
たとえば、子どもたちがカエルをつかまえたら、図鑑でエサになる虫を調べて、虫取りをします。虫をつかまえたら、実際にカエルにあげてみて、どんな風に食べるのか、どれくらいの量を食べるのか観察。自分たちで調べ、体験しながら、遊びのなかで学んでいくのです。
子どもたちは、ただ遊んでいるだけでなく、こども園・保育所の生活のなかで、学びの土台となる「知りたい」という意欲を育んでいます。そして保育士は、常に子どもたちの「学び」にアンテナを張って、成長の手助けを行なっているのです。
そんな子どもたちや保育士の姿を見てもらうため、高浜町のすべてのこども園・保育所では、教育関係者たちに向けた公開保育を行なっています。
子どもたちの学びを見取る
公開保育。
公開保育では、小学校教員や教育委員会、県の幼児教育支援センターのスタッフなどが保育の様子を見学し、意見交換や情報の共有をしています。
今回は青郷保育所で行われた公開保育にお邪魔してきました。みんなはプレイルームで、運動会の練習中。
子どもたちが自分から、運動会の練習がしたいと言ったのだとか。普段から主体性のある保育を目指して、子どもたちの「やりたい」という声には、できる限り応えるようにしているのだそうです。
みんなで声を揃えたり、音楽に合わせて動いたり。友達と協力する楽しさなど、いろんなことを学んでいるようでした。
年長さんは、ひとりひとりの個性が光るお弁当づくり遊び。工作をしながら、味を想像したり、彩りを考えたり、楽しみながら学べることがいっぱいです。
どんなお弁当を作ったのか、誰のお弁当が美味しそうだったかなど、みんなで話す時間も。保育士さんは「旬のお野菜は何かな?」「このお弁当の値段は?」など、季節や数字を意識した声かけをされていました。
年中さんは、遊びやお友だちとの関わりで発見したこと、感じたことを話し合う「みんなの時間」をしています。言葉で伝えること、お友だちや先生の言葉を理解すること、みんなで楽しくおしゃべりしながら、たくさんのことを学べる時間です。この「みんなの時間」は、年少さん以上のクラスで、ほぼ毎日行われているのだそうですよ。
話題になっていたのは、キャンディやドーナツ、かぼちゃなど、自分たちで作った折り紙のこと。折り紙を見せて、どうしてコレを作ったのか、どうやって作ったのかなど、いろいろなことを話していました。
公開保育の参加者たちは、子どもたちの遊ぶ姿を見たり、ときには一緒に遊んだり、学びを見取ることを意識しながらコミュニケーションをとられていました。この後は、感じたことや気づいたことを共有する意見交換会が開かれます。
それぞれの想いや情報を伝え合う
意見交換会。
意見交換会は保育士、小学校教員、教育委員会だけでなく、福井県の幼児教育支援センターのスタッフも参加されます。町外の専門家からのアドバイスも聞きながら、円滑な保幼小接続をみんなで考えていきます。
保育士から、子どもたちがどんなことに興味を持っているかのお話がありました。いまは空き箱でものづくりをしたり、店屋さんごっこをしたりすることが流行っているそうです。また、子どもたちの声を聞きながら、この日のように運動会の練習をするなど、臨機応変に対応しているそうです。
つかまえたカエルのエサになるバッタがいなくて、ミミズ探しをしたことや色水を使ったジュース屋さんごっこで、色水に糊を入れてアクセサリー作りに発展させたことなど、子どもたちの機転やアイデアで、どのように遊びの幅が広がったのかという話もありました。
参加者のみなさんは、子どもたちが自分で遊びを考えたり、気持ちを伝えたり、お友だちの話をしっかり聞いたり、毎日いろいろな経験ができていて、それが小学校に向けての土台づくりになっていると感心されていました。
小学校の先生に
公開保育の感想を聞きました。
公開保育で印象に残ったことは何でしたか?
伊藤先生:
「子どもたちが意思を伝えたり、友達の意見を聞いたりする『みんなの時間』が印象的でした。みんなの時間から新しい遊びがはじまったり、明日の遊びが決まったりすることころも、すごい!と思いました」
特に参考になると感じたところは?
伊藤先生:
「子どもたちの興味を突き詰めていく保育士さんたちを見ていて、小学校でも『まなびを見取る目』を養っていきたいと感じました。子どもたちが自分で学びたいと思うように導く姿は、とても参考になりました」
小学校では、どんな授業を心掛けているのですか?
伊藤先生:
「1年生のころは、半分座学、半分遊びのようなハイブリッドな授業をしています。子どもたちの興味に合わせて『図書室に行って調べてみようか』『校庭に出てみようか』と、身体も動かしながら、徐々に授業に慣れていくように工夫しています」
・・・
保育士たちは子どもたちのお世話をするだけでなく、日々、学びや成長の手助けを行っています。そして、幼児期が終わっても、子どもたちが安心して小学校で可能性を伸ばしていけるように、保育・教育関係者たちでしっかり連携されているのですね。
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