2025.1.20
見つけた!こんなところに町の未来
大切な特産品、杜仲茶を未来へつなぐ。 ふくいSDGsパートナー企業「山惣ホーム」
持続可能な開発目標「SDGs」の取り組みが、全国的にも定着化してきています。ここ高浜町でもSDGsに対する意識が高まり、地域自然を有効に活用して、未来まで守っていく活動を行う企業が増えています。
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青葉山の麓、高浜町中山にある『山惣ホーム株式会社』さんもSDGs活動を行う“ふくいSDGsパートナー”に登録されている企業のひとつです。建築・土木を中心に、県産材の積極的な利用、端材を活用した家具を製作・販売するなど環境に配慮した事業活動をされています。また地元人材の雇用やまちづくり活動への参加など、地域貢献活動にも熱心に取り組まれています。
そんな山惣ホームさんは、2019年、町の未来につながる新しい挑戦として、杜仲茶生産を行う農業部門をつくられました。
Photo by Yamaso home
今回は、山惣ホーム農業部門の森田茂樹(もりたしげき)さん、山本公美(やまもとくみ)さんに、杜仲茶栽培にかける想いを聞かせていただきました。
<杜仲茶って、どんなお茶?>
杜仲茶とは中国原産の木の葉を乾燥・焙煎したお茶。亜鉛、カリウム、カルシウムやマグネシウム、ビタミン、葉酸など、栄養素が豊富なノンカフェインのお茶で、妊婦さんから子どもまで、安心して飲めるお茶として知られています。
大切なふるさとの特産品を
未来につなげたい。
建築や土木を専門とする山惣ホームさん。全くの畑違いともいえる農業部門への進出には、どんなきっかけがあったのでしょうか。
森田:
「約30年の間、高浜で杜仲茶をつくっていた杜仲茶生産組合さんの高齢化が進み、後継者も見つからず、杜仲茶の生産を続けることが難しい状況になっていたんです」
ちょうどその頃、高浜町では、担い手不足から、せっかくの良い土壌である田畑を放置したままという農家の方がたくさんいらっしゃいました。
この2つの問題の解決策を考えたときに、使われていない農地を杜仲畑として生まれ変わらせることを考えついたそうです。
森田:
「杜仲茶は高浜ではとてもポピュラーで、子どもの頃から飲んでいる人も多い。大切なふるさとのお茶を無くすわけにはいかないという社長の強い想いもあって、山惣ホームで杜仲の育成から杜仲茶生産、販売を行う農業事業部が立ち上がったんです」
Photo by Yamaso home
杜仲茶生産組合さんから受け継いだ杜仲の木は約500本。さらに新しい畑を増やし、そこに苗を植えて、どんどん規模を拡大していかれました。いまは20か所以上の畑で約9000本の立派な杜仲の木が育っていますが、事業がスタートした当初は苦労も多かったと言います。
森田:
「杜仲の木は自然の中で生きていける強い木なのですが、さすがに小さな苗の頃はしっかり世話をしないと育ちません。農業部は5名ほどの少人数部署ですし、初めはわからないことだらけ。広い畑が何面もあるので…水やりも草刈りも一苦労。虫はつきにくいんだけど、鹿が食べにきちゃうし、大変でした…」
事業を引き継ぎ、2年後には施設も強化。いまでは収穫量も大幅に増え、なんと今年(2024年)は4.5トンもの葉を収穫。葉の乾燥や焙煎を行う加工場も新設され、美味しい杜仲茶を安定して提供できるようになってきたそうです。
山本:
「杜仲茶を多くの人に届けるために、生産規模を大きくしてきました。収穫量も増えてきたので、次はたくさんの人に杜仲茶の魅力を知ってもらって、買ってもらえるように頑張らないと。なので販路開拓やターゲットに合わせた商品の見直し、開発にも視野を広げています」
▼可愛らしいデザインと、小さなサイズが人気
Photo by Yamaso home
高浜を代表する特産品として杜仲茶を未来につなぐために、畑をしっかり守りながら、新しいことにもチャレンジし続けることが大切だと山本さんは言います。
山本:
「新しい試みとして、杜仲茶のブレンドティーをつくってみたいと思っています。商品開発の専門知識がないので、なかなか難しいんですけど…。協力してくれるパートナーを見つけて、いつか実現したいですね」
無農薬・無添加、真心こもった
杜仲茶ができるまで。
杜仲の収穫は、8月の下旬頃から本格的に始まります。従業員さんたちが高さ2〜3メートルまで育った枝の根本をノコギリで切り、枝をしごくようにして手際良く茶葉を集めていきます。
▼強い日差しの中、従業員さんの汗が光る
茶葉はその日のうちに天日干し。乾燥を終えると二段階の焙煎(ばいせん)にかけて青臭さを消し、甘みとコクを出していきます。
▼農場に隣接する、杜仲乾燥棟
森田:
「乾燥棟では、天候に左右されずに、温度や湿度を管理しながら葉の乾燥ができます。収穫後すぐに乾燥作業に入れるので、葉の鮮度を守り、苦味やエグみが少ないお茶がつくれるんです」
乾燥棟の温度は40℃から50℃にもなる高温。その過酷な環境のなかで、葉の乾燥を手作業で行います。焙煎も美味しさを追求、手間や時間を惜しみません。
▼この日の室温は、なんと56℃
杜仲茶は特有のクセがあるお茶。そのクセを好む人もいますが、苦手な人も多数いらっしゃいます。ですが、山惣ホームさんの杜仲茶は飲みやすいと評判です。
森田:
「もともと、杜仲茶生産組合さんが生産されていた頃から、高浜の杜仲茶はクセが少ないといわれてきました。その組合から受け継いだ乾燥や焙煎の方法をベースに、さらに美味しい杜仲茶づくりを目指しています」
Photo by Yamaso home
森田:
「鮮度を保つために、焙煎はすべてを一度にせず、なくなったら随時やっています。焙煎は、いろいろ試行錯誤して見つけた最適な温度で、2回行っています。この2回焙煎が高浜の杜仲茶づくりの最大の特長といえますね。手間がかかりますが、甘くまろやかで、飲みやすい杜仲茶に仕上がります」
Photo by Yamaso home
工場での袋詰めまで、ひとつひとつ丁寧に手作業で行われます。
こうした生産過程を見ると、たくさんの人の思いと努力が美味しい杜仲茶に繋がっていることを実感し、感謝の気持ちが湧いてきます。
▼杜仲茶ができるまで
杜仲茶を通して伝えたい
地域の魅力と、ふるさと愛。
杜仲茶の美味しさを1人でも多くの人に知ってもらいたい。自然の恵に感謝し、心豊かに故郷を想う人の和が広がって欲しい。そんな想いで、イベントにも積極的に参加されています。
▼杜仲茶の試飲や杜仲を使ったお菓子を紹介
また、地域の子どもたちにも杜仲茶と親しんでもらうために、収穫体験や栽培方法を教える活動をはじめたそうです。
山本:
「近所の青郷保育所の子どもたちに収穫体験をしてもらったり、杜仲茶のことや栽培方法を紙芝居にして教えたりしました。子どもたちにもとても喜んでもらえて、嬉しかったです。来年以降は、他の町内保育所でもできたらいいなと思っています」
山本:
「この紙芝居はスタッフが自作してくれたんです。歴史とか難しい話って、子どもにはつまらないじゃないですか。少しでもみんなが興味をもって聞いてくれるように、工夫しました。こどもたちが杜仲茶を通して、地域のことをもっと好きになってくれたら嬉しいですね」
また他にも、葉を収穫した後の枝を肥料などで再利用できないか、薬草の宝庫といわれる青葉山の薬草とコラボ商品がつくれないか、地域の発展を考えた案をいくつも話してくださいました。
きっと山惣ホームさんの誰もが予想していなかった杜仲茶の生産事業。けれど、社長は『10年続ければ、結果は必ず出る』と言われました。その言葉を強く信じ、全力でがんばる農業部のみなさん。これからも美味しい杜仲茶を作ってください!
森田さん、山本さんありがとうございました。
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山惣ホームさんの杜仲茶は、高浜町のふるさと納税返礼品にもなっていますので、そちらもチェックしてみてください。
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