2025.3.6

賑わう漁村エリアにしたい。思いの結晶「しおど漁村水族館」


高浜町の海辺にひっそりとある水槽…。知る人ぞ知る場所に「しおど漁村水族館」があります。

 

 

ちなみに館長は僕。高浜町に移住し、漁師建築家として活動している藤本です。使われていない漁師小屋をアップサイクルし、イベントを行ったり「高濱明日研究所」での活動もしています。詳しくは過去の記事もご覧ください。

 

▼相棒と一緒に漁師がはじまった話

漁師建築家というライフスタイルの話

 

僕の自宅の倉庫を使い、ちょうど一年前に始めた小さな水族館。今回は水族館の開館までの秘話、そしてこれからの展望についてお伝えしようと思います!

 

 

 

「しおど漁村水族館」とは?

 

しおど漁村水族館は、高浜町の塩土 (正確には塩土の端っこ:高浜町若宮)にある、水槽の幅1.8mの小さな水族館です。

 

 

ここでは高浜の海にいるお魚たちを展示しています。僕が漁師でもあるので、地域で獲れた季節の魚を展示できることが、この水族館の特徴です。

 

 

ちなみに高浜で獲れるお魚が何種類くらいあるか、ご存知ですか? 

 

なんと、150種類以上もいると言われています。高浜の漁業は定置網漁や刺網漁、延縄漁などが多く、狙った魚だけでなく、さまざまな魚が自然に捕れるんです。実は、高浜で獲れるお魚の図鑑もあるので、興味があればぜひチェックしてみてください。

 

 

 

また、知られていないことですが、大型定置網にはマンボウやウミガメ、時にはリュウグウノツカイやジンベエザメ、ハンマーヘッドシャークなどがかかることもあります。こういった大きな生き物はもちろん持ち帰れませんが、海に帰してあげています。しかし、珍しい生き物や面白い生態のものが入ると、展示して見てもらいたいと思い、この水族館を始めました。

 

 

始めてみると、先輩漁師の方々が「刺網に面白いものがかかったぞ〜」「ふじもん、サンゴいる?ナマコもいる?」「サザエ網にヤドカリがいっぱいかかったけど、いる?」と声をかけてくれ、どんどん水族館が賑やかになっていきました。

 

 

 

 

「泳いで暮らすまち」塩土水族館構想の始まり

 

実は、この水族館の構想は2016年、僕が大学生の頃に始まっていたんです。大阪大学で漁村について研究していた僕は、海や福井県には全く縁がない学生でした。しかし、ある日、和田ビーチで海の家を設計・施工・運営するイベントに誘われて参加し、高浜町と出会うことになりました。

 

▼学生浜茶屋「NEW NEACH TIME」

 

そのイベントは「せっかく関西の学生がたくさん来ているし、昼は海の家を運営し、夜はまちづくりについて考えて、まちの人々に提案しよう!」という、謎のスーパーハードスケジュールな活動でした。建築学生たちは、当時建設予定だったUMIKARAや新漁協施設で盛り上がる海際に対して、近隣の塩土地区はどうしたらいいのか?と、勝手に考えました。

 

 

そして、まちを歩きながら本当にたくさんの人と井戸端会議をして、考え抜いた末に出たアイデアが、「塩土・漁村全体が水族館になったら面白いよね~」というものと、「歩きながら楽しく人と話しながら、面白い集落で宿泊できる体験があったらいいよね~」というアイデアの2つでした。

 

▼塩土の人たちにプレゼン

 

この2つを統合して、「泳いで暮らすまち」という、塩土全体に点在する宿泊施設と水族館をセットにした提案をしました。

 

 

プレゼン自体は盛り上がったのですが、最後に残った問題は、「で、誰がやるのか?」ということ。その結果、この案は2016年から約8年間、数名の人々の記憶に残ることなく忘れ去られていきました…。

 

 

 

できることから、とりあえずやってみよう!精神

 

機が熟し、2023年6月に高浜町に移住した僕。移住後は、漁師としての生活が始まり、同時に独立して建築デザイン生活もスタートしました。海に出て教えてくれる先輩漁師がいたり、デザインを頼んでくれる方がいたりと、人々に感謝しながら、めまぐるしい日々を過ごしていました。

 

 

その間、漠然と「いつか水族館をやりたいな」「漁師小屋を改修したいな」と妄想しながらも、家の前で錦鯉を飼ったり、無人の釣具屋を始めたりしていました。

 

 

ある日、水産女子の中村ちゃんから「で、水族館いつやるん?」と言われ「ははは…」と流していたのですが、数ヶ月後「小浜で水族館やりたいらしい青年を連れてきたから、話してみてくれん?」と。そこで、小浜で水族館をやりたいという眞壁君と会い、話が盛り上がり、気づけばその日のうちにヤフオクで大きな水槽を購入していました(笑)。

 

 

とりあえず倉庫にスペースがあったので、ちょうど水槽が入る大きさの窓もあったし、外から見えるようにしよう!という「なんとかなる精神」でスタートしました。

 

 

定置網では春から梅雨の時期にホシザメがよくかかるので、サメを飼うところから始めました。その後、さまざまな方々が「知る人ぞ知る水族館」として訪れてくれ、大盛り上がりに。さらに、仲の良い人たちとサメの前で飲む「サメバー」を開催するなど、楽しい水族館ライフが始まりました。

 

 

 

温かく見守ってくれる、塩土のお客さん

 

やってみたら、野生の魚を飼うのはなかなか難しい。サメがいましたが、エサを食べてくれなかったり、夏の高水温で魚たちがダウンしてしまったり。さらに、コケ掃除をしたいのに、エイにオコゼ、毒魚の毒でゾクゾクしたり…。

 

 

もうすぐ1年が経とうとしていますが、本当にいろんなことがありました。最初は車の免許も持っていなかったので、水換えも自転車でタンクを載せて漁協に汲みに行き、20Lずつ何往復もしてやっていたりしていました。それでも、塩土のみなさんや常連のお客さんがすごく温かくて、そのおかげで続ける気力をもらっています。

 

 

中には、仕事終わりに水槽を見て一服しながら「これがワシの最近の生きがいや~」と言ってくれるおじさんもいれば、インスタに新しい魚をUPすると絶対に来てくれる家族もいます。また、散歩コースを変更して水族館に寄ってくれるおばあちゃんもいます。楽しんでくれる人たちのおかげで、なんとかやる気を出して続けていられる感じです。

 

 

 

漁師小屋をワクワクに変える!

 

「漁村全体が水族館になったらオモロイなあ…」と思いつつ、いきなりそんなことはできません。でも、2つぐらいはなんとかなるかなと思い、なんと2号店の準備を進めています!

 

▼漁師小屋複合施設イメージ

 

今度は塩土集落の北の端、UMIKARAの目の前にある漁師小屋を改修する計画です。その小屋は、2階建ての建物が2つ繋がったような形で、1階を「水族館」、2階では「本とコーヒーと魚1匹・人ひとりの空間」と「ラジオ局」を運営する予定です。 まさかの漁師小屋で複合施設(笑)。

 

 

「また水族館を増やすの?これからどうしたいの?」とよく聞かれますが、正直なところまだ分かりません。でも、塩土に並ぶ漁師小屋は、日本海にしかない文化で、これほど残っている場所はなかなかない!と漁村オタクとして自負しているので、この風景をどうにかして残したいと思っています。

 

そのためには、漁師小屋を継承し、利活用することが大事だと思っています。

 

 

そこで、仲間である高濱明日研究所と一緒に「海の五十貨店プロジェクト」を始めました。このプロジェクトは、漁師小屋の並びが百貨店ならぬ「五十貨店」になったら面白いなというアイデアから生まれました。高浜に百貨店は贅沢すぎるけど、半分の五十貨店くらいで、高浜になかったけど欲しいものを作ろう!という話をしています。

 

 

もちろん、漁師小屋を使ってみたい方がいれば、どんどん一緒にやっていこうと思っています。これからますます面白くなっていく塩土エリア。みなさんお楽しみに!

 

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